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「私は、誰かと会うことが滅多になく、最近お会いしていれば、必ず覚えていると思います」
「安心してください。君と僕が顔を合わせるのは、今日が初めてですよ」
その言い方は、まるで、小さな子どもに言い聞かせるようだ。
「待子さんは、子どもの頃、『まーちん』と呼ばれていませんでしたか?」
「そうです! なんで、分かるんですか?」
待子は、往子をはじめ、仲の良い友達から『まーちん』と、呼ばれていた。
あの日から、呼ばれることはなくなったけど。
「すごいですね。そこまで私のことが分かるなんて。どうやって、分かったんですか? いえ、それとも、私のことを調べたんですか?」
やや警戒感を持ち出した待子は、鎌をかけてみた。
「ネタバレしてしまうと、すでに知っていました」
賀陽があっさりと白状した。
「誰から聞いたんですか?」
ショックを受けている待子に、賀陽は説明した。
「人の口に戸は立てられぬ、ってことです」
おそらく、近所の人から聞いたのだろう。
待子は、ゾッとした。
怖いと、思ったから、賀陽から数歩離れた。
「なんで……、なんで、私のことを調べているんですか?」
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