第一章 催眠術探偵登場

8/36

141人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「驚かせてすみません。実は、こういうものです」  賀陽が懐から名刺を差し出したので、待子はそれを受け取って読んだ。 『探偵 賀陽康史(かやこうじ)』と書かれている。 「あなた、探偵? 興信所? 私のことを調べているんですか? 誰かに頼まれて? 私は、調べられるようなことをしていません! 結婚だって、就職だって、何も、何もない私なんですから!」  立て続けに質問したあげく泣き出した待子を、賀陽は、一旦、優しく受け止めた。 「ああ、困ったな……」  賀陽は、本当に困った顏になった。 「君のことを調べていたら、堂々と名刺を出して名乗りませんよ。調べていたのは、君のことじゃなくて、別のこと。その関係で、いろいろと知っているんじゃないかと思って、君に話を聞きに来たんです」 「何について知りたいって言うんですか? 私は何も知りません。だって、10年近く引きこもっていたんですから……」
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加