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「驚かせてすみません。実は、こういうものです」
賀陽が懐から名刺を差し出したので、待子はそれを受け取って読んだ。
『探偵 賀陽康史』と書かれている。
「あなた、探偵? 興信所? 私のことを調べているんですか? 誰かに頼まれて? 私は、調べられるようなことをしていません! 結婚だって、就職だって、何も、何もない私なんですから!」
立て続けに質問したあげく泣き出した待子を、賀陽は、一旦、優しく受け止めた。
「ああ、困ったな……」
賀陽は、本当に困った顏になった。
「君のことを調べていたら、堂々と名刺を出して名乗りませんよ。調べていたのは、君のことじゃなくて、別のこと。その関係で、いろいろと知っているんじゃないかと思って、君に話を聞きに来たんです」
「何について知りたいって言うんですか? 私は何も知りません。だって、10年近く引きこもっていたんですから……」
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