第一章 催眠術探偵登場

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 この10年間で、世の中は変わった。  同級生たちも、変わった。  待子だけが、何も変わっていない。  家にこもっている限り、変わりようがない。  外に出て、他人に接触しないと何も始まらないのだと気が付いて、こうして動きだしたばかり。  そんな真知子には、探偵に調べられる心当たりなど全くない。 「更科往子(さらしなゆきこ)さんを知っていますよね。仲が良くて、よく遊んでいたはずです」 「更科……往子……」  その名を聞いた途端、待子の動悸が激しくなり、頭が混乱してふらついた。  そんな待子を、賀陽は咄嗟に立ち上がって支える。 「大丈夫ですか?」 「ちょっと、目まいが……」 「ここに座って」  賀陽は、待子を強引に椅子へ座らせると、コップに水を汲んできて待子に持たせた。 「水です」 「ありがとうございます……」  待子は、水を一口飲んだ。  少し、落ち着いた。
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