第一章 催眠術探偵登場

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 賀陽も、待子を見て気まずい感じになった。 「あの事件について触れるのは、まだ難しかったみたいですね」 「すみません……」 「いえ。こちらこそ、すみませんでした」  事件の記憶を封印し、事件に関する話題を避け、往子の家の近くにはいかないようにした。  現実から必死に逃げて立ち直れたと思っていたのに、往子の名前を聞いた途端、体が動かなくなるなんて。  待子の中では、事件はまだ終わっていないということだ。 「待子さんには苦しいことかもしれませんが、このまま話を聞いてください。僕は、更科往子ちゃんのご両親に頼まれて、犯人を捜しています。ご両親から、ゆきちゃんと一緒にいた子は、『まーちん』と呼ばれていた子だと聞き、君がその子かどうかを確認しにきました。君で間違いないですね。その時の状況を詳しく教えてください」 「ゆきちゃんのご両親からの依頼なんですね……」  あの事件で、往子のご両親はさぞかし悲嘆にくれたことだろうと思う。  何年経とうが、娘を奪った犯人捜しに手を尽くすことは当然だ。  警察が頼りにならなければ、自費で探偵を雇うこともあり得る。 「解決に協力してもらえると、往子ちゃんも喜びます」 「往子が喜ぶ……。そうですね……」  犯人が捕まらない限り、往子もあの世で浮かばれないと言いたいのだろう。  協力を拒否すれば、今まで通り、事件はなかったこととして生きていける。 (でも、それでいいの……?)  心のどこかに、きっと芽生える罪の意識。  犯人を捕まえて事件を終わらせることは、これからの人生にとても大切なことかもしれない。  もう子どもじゃない自分に、協力は可能だろう。
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