第一章 催眠術探偵登場

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「あなたの意識は、今から10年前の公園に飛んでいく……」  待子の意識が、遠くへ飛びかけた……。  その時、人が入ってきた。 「こんにちはー!」  邪魔が入ったので、賀陽は再びネクタイをピン! と張って、待子の催眠術を解いた。 「はい、終了です」 「あれ?」  待子は、自分に何が起きたのか理解できなくてキョトンとした。  賀陽の持っていた縄跳びが、ネクタイに戻っている。 「終わりですか?」 「人が来たので、一旦、やめます」  明るく挨拶しながら入ってきた青年だったが、待子と賀陽の様子に異変を感じた。 「あれ? 君たち、何をしていたんだい? 待子ちゃん、どうしたの? 様子が変だけど、大丈夫?」 「あ……、ええ……」  いつもと違う様子の待子を見て、賀陽へ食って掛かった。 「お前、彼女に何をしたんだ!」 「何もしていないですよ」 「何もしてないはずないだろ! 見ろ! 待子ちゃんがボーッとしている! 仕事中なのに、こんな彼女を見たことない! 絶対、変だ!」 「あなたは、誰ですか? 彼女との関係は?」 「そっちが先に、名乗れ!」  賀陽は、名刺を差し出した。  青年は、胡散臭そうに名刺を受け取って読んだ。  探偵と知って、顔色が変わった。 「探偵だって? 待子ちゃんを調べていたっていうのか!?」 「違います。話を聞いていただけです。で、君は?」 「俺はここの常連客で、徳守豪臥(とくもりごうが)っていうんだ!」 「待子さんとは、ただのスタッフと客の関係ってことですね」  豪臥は、バカにされている気がして、更に興奮した。
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