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今にもつかみ合いの喧嘩になりそうだったので、待子が見かねて二人の間に入った。
「豪臥さん、心配してくれて、ありがとう。この人は怪しい人じゃありません」
「待子ちゃん、でも……」
「この人は、催眠術が使えるんだそうです。それで、事件の調査に協力するため、催眠術を掛けてもらっていたんです」
待子の説明を聞いた青年は、納得するどころか怒り出した。
「さ、さ、さ、催眠術を!? 分かったぞ! お前、探偵とか言って、大ウソだろう! 彼女に催眠術で、い、い、い、いかがわしいことをするつもりだったな!」
「いかがわしい? どういう意味ですか?」
「わ、わ、わ、わいせつという意味だ!」
怒りでブルブル震えているから、言葉が何度もつっかかる。
「そんなこと、しませんよ」
「ネクタイを外していただろ! それが証拠だ!」
「ネクタイは、必要があって外しただけだ。僕は、そんなことをしない」
「ウソをつけ! 催眠術が使えれば、やりたい放題じゃないか! とにかくこれ以上、待子ちゃんに近づくな! 出ていけ!」
興奮が収まらない豪臥は賀陽を追い出しにかかったので、待子が止めた。
「落ち着いてください! これ以上、騒ぐなら、出ていくのはあなたです!」
「な、なんだって!?」
待子のために動いるのに。
豪臥は、自分が悪者になっていることにショックを受けた。
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