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「ありがとうございました!」
客が出て行くと、待子はテーブルの上を片付けに向かった。
置きっぱなしだった本を元の本棚に戻し、濡れ布巾でテーブルの上を綺麗に拭くと、コーヒーカップを銀色のトレイに下げた。
歩いている時、座っている客と目が合った。
今日は客足が鈍く、店内にはその客一人しかいない。
待子は、さきほどからその客が気になっていた。
トップはダークブラウンのクラシカルジャケット。ボトムは真っ赤なストレートジーンズ。
ネクタイは、どピンクだ。
難しい組み合わせの色合いをおしゃれに着こなしている、若いけど渋い男性客。
ちょっと、いいなと思っていた。
だが、彼の前にあるのは、似つかわしくないスペシャルビッグパフェ。
それを食べながら、ずっと、こちらを見ている。
お客が何をオーダーしようが、自由なのだが……。
(苦いコーヒーをすすれば、さぞかし絵になるだろうに……。惜しいなあ……)
そんなことを思いながら、待子は汚れ物を片付けた。
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