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「恋……」
「ハ!」
言った後から恥ずかしさで真っ赤になり、慌てて否定した。
「今のは、違います! 間違えました!」
賀陽は、バカにすることなく真面目な顔で言った。
「恥ずかしがることなんてない。女の子らしい、いい夢だ」
「そうですか?」
「恋をしたいって、当たり前のことだからね。待子さんに、夢や希望があって安心した」
待子はホッとした。
「私、誰かとコイバナもしてみたいです」
「コイバナか……。それは、僕には難しいな」
賀陽が難しい顔で答えるので、待子は可笑しくなった。
「別に、賀陽さんに求めているんじゃないですよ。同世代の女友達としたいです。映画や漫画によく出てくる、一緒にお泊りして朝まで語りあって、みたいな状況に憧れているんです」
「……」
「でも、そのためには女の子の友達をつくらなきゃ……。どこでつくればいいのか、分からないんです」
待子は、悩んでいる。
「学校に行けば、できるんじゃないか?」
「学校は怖いところです。嫌な人たちばかり」
記憶の中の同級生たちによって、思いだしてしまった。
いつも、嫌な目に遭わされていたこと。
そのせいで、学校に対していいイメージが出てこない。
「自分で作ったイメージに、自分自身で捕らわれているんだよ。学校だって楽しいさ」
「でも……」
待子はためらっている。
賀陽は思った。
待子は、一歩踏み出そうとしてはひっこめて、同じ場所で足踏みしている状態なのだと。
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