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「カナ、お待たせ」
「遅いわよ優」
急ぎ足で下駄箱へ駆け寄ると、愛しい彼女がむすっとした顔で壁に寄り掛かって待ってくれていた。
「クラスが違うと会える時間があんまりないから嫌だなぁ」
「二度と会えない訳じゃないから別に良いでしょ」
靴を替えながらぼやけばカナの素っ気ない返事が返ってきた。ツンツンした態度はいつものことだけど、ちょっと寂しい。
二人並んで雑談を交わしながら帰り道を歩いていると、鞄から何かを取り出したカナ。
若干照れた顔でずいっと渡されたのは、可愛いピンク色の包装がされた小袋。
「きょ、今日がなんの日か知ってるかしら?」
言われなくとも知ってる。今日はバレンタインだ。
「だからって訳じゃないけど、優、甘いもの好きだし、あげなくもないわ」
口下手な彼女は素直にバレンタインのチョコだとは言えないんだろう。
付き合ってから初めて訪れるバレンタインというイベント。彼女からもらうチョコ。浮かれてしまうのは当然のことだ。
満面の笑顔でそれを受け取り、「ありがとうカナ」とお礼を言う。
「まあ優ならそこそこ顔が良いし、他の女からも貰ってるでしょうけど!」
言いながら拗ねた顔をしてぷいっとそっぽを向いてしまうカナ。
彼女の言う通り、実は他の女子からもチョコを手渡されたり、机の中に入れられたりした。
甘いものは大好き。だから今までバレンタインは沢山チョコを貰えるから大好きなイベントだった。
けど、今は……
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