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放課後。私はチョコが入った小さな紙袋を持った。
向かうのは三階の隅の空き教室。そこで凜太郎が待っているはずだ。
一歩一歩、確かめるように歩く。やっぱり緊張する。ドクンドクンと大きく打つ心臓の音が聞こえた。
空き教室の扉の前。意を決して、扉を開けようとしたそのとき
中から、男と女の声が聞こえた。
「好きです!付き合ってください。」
扉を数cm開けて覗いた。女のほうは告白をしているらしい。男のほうは凜太郎か。というか、なんで空き教室にいるんだ。会話を盗み聞きしていたのか。
「……え?立花さん、あの、気持ちは嬉しいけど、ごめん……。俺待ってる子がいるんだ……」
女のほうは立花莉々華か。立花は、最近転校してきた子で、文武両道、才色兼備のすごい人。
私は凜太郎が立花さんの告白を断ってまで、私を待とうとしてくれたことが嬉しかった。
中に入るタイミングがわからない。
「それって葉山さんでしょ?」
「!そうだけど…」
立花がにっこりと笑った。
「私、葉山さんに背中を押されて、告白しようって思ったの。私と凜太郎くんならお似合いだから、付き合いなよって。」
は!?なにそれ!あの女、私の邪魔をしようとしてるの?
「え……」
凜太郎は目を見開いている。
「この場所に凜太郎くんを呼び出したのも葉山さんでしょ?葉山さん、私に協力してくれたよ。」
「凜太郎くんは別に好きじゃないって、葉山さん言ってた。」
凜太郎は落ち込んでいるようだ。これは、期待してもいいのかな。凜太郎が私のこと好きだって。
「だから、私と付き合ってよ。私のほうが葉山さんよりいいよ?」
凜太郎の顔を上目遣いで見つめる立花。あざとい!
「ちょっと、まてー!」
私はもう我慢ができず、扉を開け、中に入った。
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