Q.好きも嫌いも紙一重

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俺は再度、トレイを持ち上げ、振り下ろそうとするが、それを赤月が防ぐ。 「はい問題」 「あ?」 こいつは俺を混乱させるのが得意らしい。 「今さっきのことを聞いて、なぜ、藤咲はすぐに否定をしなかったのでしょうか」 それを聞いて、ハッとする。 今の俺の行動は……言われて否定せずに暴力で訴えようとするこの行動は……図星という……そういうこと……。 「な訳ねえだろーが!!」 力一杯握りこぶしを作り、力一杯相手の頭を殴る。 「……っ、さっきから暴力ばっかりなんだけど。暴力反対。お店から賠償請求されるのも嫌だから外出るよ」 そう言うと、そそくさとトレイやゴミを片付け、出て行く。俺も慌ててついて行く。 外はすっかり暗くなり、仕事帰りの大人たちで溢れかえっていた。 2人で並んで歩く。 「そういやお前、家はどこなんだよ。引っ越しってことはお父さんが出張とかか?」 「いいや、出張じゃなくて……。無理矢理こっちに来た感じ」 「は? どういうことだよ」 「説明するとめんどくさいから、とりあえずそういうこと」 本当にめんどくさいのか、頭を乱雑に掻きむしりながら、俺を睨んでくる。 無理矢理ってことは、家出とかそういうこと……なのか? いや、それにしても、高校まで変えて来るか? これ以上聞くともっと睨まれそうだし、別にそこまで聞くことでもないからと、口を噤む。 「んじゃ、家来るか?」 「へ?」 間抜けな声が出た。そもそも、嫌いな奴を誘うのか。また新手な、嫌いな奴への嫌がらせなのか。と思って身構えていると。 「なんだその声。お前が家はどこかって言ったんだろ。教えてやるっつってんだよ」 すっごい棘のある声で説明される。 「そ、そんなに嫌いなら大丈夫です!」 「なんで敬語なんだよ。つかそんな怯えんなって」 そう言って、手首を掴まれ、半ば強制的に連行された。
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