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その家は豪奢な作りで、大きな門構え。そこへ入ると、石畳が連なり、真ん中には噴水。それを取り囲むように石畳は続き、先へ進むと、やっと家が。いや、屋敷が見えてきた。
大きな扉を開けると、広い玄関。その先にはホテルのロビーのような待合室。ソファやテーブルが数台設置されている。真ん中の奥には階段があり、2階へと続く。
他にも部屋があるようで、右の壁にも左の壁にも扉がある。
衝撃的なことが立て続けに起こり、俺の頭はパンクしていた。
放心状態で連れられるままここまで来たのだが、どういうことなのだろう。少し整理をしよう。
俺は、2階ヘと上る赤月に疑問を吹っかける。
「お前は金持ちか」
「いいや、普通だ」
普通がこんな豪奢な建物に住めるわけないだろう。
「ぷっ、っはは、やっぱりおもしれえ。俺の言ってることは本当。こんなだだっ広い家に1人で過ごせるわけないだろ。家賃なんてうん十万……、いや、それ以上、か? とにかくやばい。高校2年生のただのバイトも何もしていない少年が住めるところじゃない。でも、俺にはコネがあったわけだ」
「コネ?」
「そう、コネ。ここに引っ越せたのも、転校できたのも、全て円香のおかげだってこと」
赤月説明によると、あのマドンナの小鳥遊と赤月は従兄弟関係で、家出同然で出てきた赤月を養うために、小鳥遊一家は別荘を他人とも言える赤月に貸したのだ。
小鳥遊一家は世間を揺るがすいわゆる財閥で結構なお金持ちということで名高い。今は赤月の家と化したこの屋敷は、タダで住んでるも同然なようだ。
「それ、小鳥遊は知ってるのか?」
「もちろん。この計画を立てたのも円香自身だし」
驚きだ。驚きの連続だ。
頭痛で額を抑え、もう一つ質問する。
「ところで、あの小鳥遊とお前は……親戚だったんだな」
「ん? ああ、そうだが」
それがどうした。とでも言うように無表情で言っていて、頭痛がひどくなる。
そこで屋敷内に軽快な音が響く。
「あ。噂をすればなんとやらってやつだな」
赤月は壁に備え付けられている小さな画面に近づく。今さっきまで黒く塗りつぶされていたのに、何やら人が映っていた。遠目からはわからないが、赤月と話している声を聞いていると、赤月の先ほどの言葉にも合点がいった。
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