6人が本棚に入れています
本棚に追加
話そうにも話せられない。キスの話なんてできないし……と悩んでいたが、ふと思いつき、聞いてみる。
「赤月と小鳥遊って従兄弟だったんだな」
何ともいい会話の出方だと思っていたが、意に反して小鳥遊は唇を尖らせ、そんな話かよ、とでも言いたげな目で訴えかけてくる。
「まあ、そうだけど……。何? 進展はなかったの? ええー。つまんなーい。ねえ、じゃあ、唯十から何か言われたりされたりしなかった?」
更に身を乗り出してくる。『言われたりされたり』の言葉でふと、キスのことが蘇ってくるが、すぐに払拭し、
「赤月は家出同然で飛び出したみたいで、小鳥遊一家に助けてもらったって言ってた。びっくりしたよ。2人とも面識があったなんて。しかも小鳥遊って苗字、あの小鳥遊財閥の娘だったんだね」
小鳥遊は途中から両耳を両手で塞ぎ、あーーーー、と声に出して聞こえないふりをしていた。
だが、小鳥遊は何かに気づいたようで、ピタッとその動作を止めて俺に向き直る。
「ちょっと待って。今なんて言った? 家出同然? 私、そんなこと聞いてないわ」
「え?」
しばし、2人の間で沈黙が続く。
「おー? 何の話してんだ? 俺も混ぜろよ」
2階から階段を使って降りながら赤月が割って入る。
「ちょっと唯十来なさい」
最初のコメントを投稿しよう!