チョコレート売りの少女

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 そもそもこのバイトを受けたのもバレンタインに予定がなくて、普段行っているバイト先で「えっ、サナさん。彼氏いないの?」って同僚に訊かれたくなかったからで、それに1人でバレンタインを過ごすのも何か落ち着かないから嫌だったから。  でも、もうダメ……昨日の夜から何も食べてないからお腹は減るし、何より寒い。私は駅の壁に座り込む。手はかじかみ、指を動かすと痛くなってきた。私は両手の指先を併せて口から直接息を吹き込む。どうしよう……このままだと凍死しちゃうかも……だが、そんな私に映り込んだ物は……  チョコレート……  籠の中に山盛りに積まれたチョコレートは私の食欲に火を点火させようとする。食べたい……でも、ダメ。売り物なんだから……でもでも、一つだけならバレないよね?私はチョコレートの入れ物を破り、銀紙の中から姿を現したチョコレートを一噛み。  美味しい!  チョコレートがこんなに美味しく感じられたのは子供の頃に食べて以来な気がする。私は残りのチョコレートも一気に食べあげた。身体が温かくなってくる。確かチョコレートって結構高いカロリーだったけ、でもそんなことは今はどうでもよかった。問題はこの一個だけにするかどうか……  
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