チョコレート売りの少女

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 そして再び視界は暗転する。次、瞼を開けると今度は夕暮れの河川敷だった。辺りを見渡すと一組のカップルが光に照らされたアスファルトの上に立っていた。 「今日バレンタインだって覚えてる?」  若い女性がそう言うと、スポーツマンらしき男性は苦笑いを浮かべていた。女性はそんなこと気にせずに自身が使ったのだろう手作りチョコレートを取り出す。 「これ、手作りチョコレート。食べてくれる?」 「ごめん……今、減量中だから食べる訳にはいかないんだ……ごめん」  男性は大きく頭を下げて謝っていた。女性は気まずそうに作り笑いを浮かべていた。でも、なんだか羨ましいな……  そして、再び視界は暗転する。再び視界に光が戻るのと同時に映し出されたのは家の中だった。 「ただいま」  玄関から聞こえた男性の声に奥さんらしき人が玄関に向かった。玄関には仕事帰りのくたびれたスーツ姿の男性が立っていた。だが、そのスーツに似つかわしくない物が…… 「なに、そのスーツに挟んだ板チョコは!私に見せびらかしたいの?」 「いや、これは別にそういうつもりじゃなくて……」 「浮気ね!どうせ、会社の可愛い女の子から貰えて嬉しかったんでしょ?義理チョコなのにさ!もう、いいわ。私、実家に帰りますから!」 「ちょっと待ってよ。俺が悪かったって。許してくれよ!」  荷作りの準備を始めた妻をなだめようと夫は謝りに行く。だが、そんな夫を障害とすらせず荷作りを終えた妻は家を出て行ってしまった。
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