第二十四章 生きている森 四

2/5
前へ
/238ページ
次へ
 翌日、目覚めると志摩の手の中で、場所も気にせず、志摩に甘えてしまった。  光二とチェンジしているが、ここはホテルの一室で、まだ家に帰れていないのだ。横には氷渡が、まだ眠っていた。 「……志摩、お風呂を造ろうね」 「はい、守人さん」  志摩の声に、氷渡も起き上がり、驚いていた。 「志摩、声が戻ったのか……良かった」  氷渡が、半分裸で寝ていたので、夜は光二と楽しんでいたのかもしれない。氷渡は、自分の姿を見ると真っ赤になって、朝風呂に向かって行った。 「志摩も、もうすぐ仕事か。瀬々木さんの家に到着したら、呼ぶからね」 「はい」  志摩の指が、俺の背を撫ぜて、服の中に入ってきていた。 「守人さんの肌は、張りが合って気持ちいいです」  志摩の指にキスをすると、指が真っ赤になっていた。 「志摩、大好きだよ」 「はい、私も守人さんが大好きです」  志摩は喫茶店ひまわりでのモーニングがあるため、戻っていってしまった。俺が茶を飲みながら景色を見ていると、氷渡が戻ってきていた。 「食料不足で、客が怒っているよ」  朝食のパンが届かないので、和食のみになったが、どうも全員分は用意できないらしい。  朝食なしにしてくれたら、宿泊費を割り引く、もしくは土産を進呈するなどをホテル側が申し出ていた。  土産は食べられないものばかりだが、何故か酒も混じっていた。 「酒でいい。俺は酒造元に行きたかった」 「はいはい。では、酒で手を打ちましょ」  身支度を整えると、チェックアウトのために、ロビーに行く。氷渡が丁寧に、瀬々木の説明をしてくれたので、スムーズにチェックアウトができた。そこで、日本酒を選んでいると、氷渡が神妙な顔になっていた。 「芥川、全員分の二泊を支払い済にしていたよ。マメだな」  帰る時に、先払いをしていたらしい。 「それで、日本酒を三本、選んで良し!」  俺が、一升瓶を三本取ると、店員が笑っていた。 「じゃ、帰ろうか……」  食料は、救援物資がヘリで運ばれるとなっていた。もう少しで、やって来るだろう。 「上月、ここで食糧を出したら、又、厄介でしょ。帰るよ」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加