第二十四章 生きている森 四

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 車に乗ると、瀬々木の家に向かった。  瀬々木の家へは、山道であったのでかなり揺れたが、確かに道は通じていた。  瀬々木の家に到着すると、瀬々木は鞄を持って外に立っていた。 「息子も頼む。森羅だけでいい」  芥川が帰っていたので、車には乗れる。全員が車に乗った所で、志摩を呼びだした。 「志摩、頼む。工藤室長の家にお願い」 「はい。守人さん」  志摩は車ごと掴むと、工藤室長の家の庭に移動していた。  着地の瞬間、落ちる衝撃はあったが、移動に問題はない。しかし、工藤室長の家の庭が広くて良かった。  車から外に出ると、工藤室長が雨戸を開けて庭を確認していた。 「随分、早くに来たね。車は駐車場にお願い。上月君、話しはじっくり聞くから、帰らないでね」  パジャマ姿の工藤室長は、瀬々木も手招きしていた。 「あ、森羅か。亜弥は残してきたのか……」 「まあ、亜弥も両親の元ならば安定しているからね。ちゃんと人型で過ごしていてね、馬に乗って走り回っているよ」  どこか、普通の夫婦とは異なるが、信頼がある事は分かる。  工藤室長の家は大きく、特に庭が広かった。俺が庭を見ていると、朽ちた犬小屋があった。 「犬を飼いたいのだけどね、散歩に行けないから、諦めている」  犬小屋があるということは、前は飼っていたのだろう。  俺が玄関を入ると、大きなリビングに通されていた。ここで一人暮らしなど、結構、贅沢ではないのか。 「あ、この家は祖父のものでね、俺は管理しているだけだから」  工藤室長は着替えてくると、パンを焼いてくれていた。 「朝ご飯がまだなのでしょ。食べながら話そうか……」  そこで、パンを貰うと、サンドイッチなども作ってみた。 「まず、あの隕石なのか、爆発なのかの現場にいたね?」  大きな木のテーブルに、朝食を並べて、コーヒーを淹れてみる、見た目は優雅なのだが、話は殺伐としていた。 「いました。巻き込まれる寸前でした」  隕石でも、爆発でもなく、あの場所で泥人形の大元、核とも呼べるものが作成されたと説明してみた。工藤室長も、泥人形は知っていて、その作成方法も知っていた。 「あの場所で、空間の圧縮があったのか。でも、大きすぎるでしょ」
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