第二十四章 生きている森 四

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 俺も詳しい大きさを把握していなかったが、直径が二キロにもなっていたらしい。俺の感覚では半径五百メートルあたりであった。もしかしたら、報道では、木が倒れているだけの部分も測定しているのかもしれない。俺は、泥人形の大元になった部分だけを測定していた。 「村の圧縮は、直径五百メートルでも大規模だよ」  それは、飲み込まれた、生きた人間の数が異なっている。俺は、自分で撮影した画像を、テレビ画面に繋いで流してみた。 「これが、消失前の樹海です」  俺の横には、モモコが走っていた・ 「この犬は?」 「モモコです。俺と契約している×です」  すると、工藤室長はモモコを凝視していた。モモコは悪魔のような姿をしているが、俺を守ってくれている。俺を喰い殺そうとしているかのようしか見えないモモコだが、これは必死になっているだけだ。本当は、嬲り殺しの性癖を抜かすと、モモコは優しい。 「モモコは……」  見た目は怖いが、今回モモコは、俺を飛ばさないように掴み、物が当たらないように盾になっている。本当に優秀な犬なのだ。 「……可愛い犬だね」  モモコを可愛いと言うのは、かなりの強者だろう。でも、モモコは喜ぶだろうから、今度、工藤室長の家に連れて来よう。 「これ、ここに研究員らしき人がいるのですが、多分四人は、巻き込まれています」  研究員の数は五人で、小さい一人以外は、消失後に見ていない。 「この器材は、見覚えがある。これは、ウチの研究所ではないよ。ライバル会社だ」  器材に見覚えがあるが、それは、予算の都合で購入できなかったかららしい。どこか購入しているのかと、営業に聞くと、ライバル会社は購入しましたと、プレッシャーを掛けられたという。  そして、映像は逃げるシーンが続き、モモコと風を避けるシーンが続く。 「モモコ、頑張るね。これは、かなりいい犬だね」  そこを観察しなくてもいい。でも、モモコを褒められると、俺も嬉しい。  そして消失後に、俺が木に登って見た景色も残っていた。  生き残っているのは、小さい人影と、赤ん坊のように泣く物体であった。 「泥人形の大元というのか、核は、進化した形で、相手に渡ったということだね」  器材は失われているので、研究結果は残せなかっただろう。 「そうですね、でも、俺達にはデータが残りました」 「この画像は、データとしては不十分だよ」
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