予感

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翌朝、翔が目を擦りながらリビングへ行くと、以前と変わらない完璧な兄がそこにはいた。 …と言っても、見た目の話だが。 中身はとてもじゃないけど以前と同じとは言えない。ぼーっとテレビを見ながら、カップを持った手が宙で止まっている。 「いや、もう…マジで怖い。なんなの?」 朝から本当に怖いものを見た…と、思いながら、翔は野本の正面のソファに腰かけた。 「兄貴の好きな人ってどんな人なのさ?いったい何があってそんな頭悪そうな感じになっちゃってんの?気持ち悪くていられないよ。まだ貞子の方がマシ」 貞子と比較されてもピンと来ている様子はないが、野本はため息を吐きながらカップをテーブルに置いた。 どうやら質問には答えてくれるらしい。 「どんな人か……?まあ…普通じゃない事は確かだな」 「普通じゃないって…変人なの?ちょっと…イマイチ兄貴の好みが分かんないんだけど」 翔は苦笑いを浮かべる。 「そうだな…変人っていうより…特別な人?」 ──それは兄貴にとって特別という意味ですか…? またおかしなことを言う兄に向って首を傾げる。
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