予感

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そんな翔の様子を確認しながら、野本は昨夜の事を思い出した。 「なあ、お前…ディスカウントショップでアルバイトするって言ってなかったか?」 「ああ、もうしてるよ。すぐそこの店。ブランド品コーナーに決まったんだよね。ほら、俺、見た目がいいから」 自信に満ちた笑みを浮かべると、野本はその笑みを見ながらため息を吐いた。 「お前に頼みがある」 ため息を()きながら()く言葉だろうか。 急にそんなことを言い出すから、翔はソファの上で身を引いた。 「怖いんだけど。…っていうか、怖いんだけど」 なぜ二度言ったのかは謎だが、まあ…よっぽど怖かったのだろう。 兄から頼みごとをされる事など滅多にない。 真剣な面持ちで自分を見つめる兄に同情すると、 「なんなのさ」と、言葉を返した。
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