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ブラウンのソファに横たわったまま、文庫本を両手で掲げて本を読む。
ペラペラとページをめくる音が室内に響き渡ると、不意に大きなため息を吐きだした。
無意識に吐き出したため息に、何に対して思いつめていたのだろう…と、自分でも考えたようだ。
ソファから身体を起こすと、カーテンの開け放たれた窓の外に目を向ける。
夜空が目に入った。
星は見えるが、多くは見えない。でもまあ、東京よりは多い方か…と、またため息を吐きだす。
数分間、本を読む手を休めて窓の外を見ていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
迷わず視線を向ければ、自分と似たような顔立ちの青年が入ってきた。
「翔、飯は食ってきたのか?」
開口一番、そう訊ねた。
「食ってない。っていうか…兄貴さぁ、なんかオヤジくさいよ。そのルックスでオヤジくさいとかマジ、引くんだけど」
青年は、それはまあ、ひどい言葉を並べて攻撃してくる。
自分と似た顔をした相手だけに、言葉が出なくなってしまった。
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