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確かにコイツが『ご飯食べた？』なんて聞いてきたら、新妻か、と突っ込んでしまいそうだ。
なんて思いながら、手に持っていた小説を再び開いた。
その姿を見た青年は首を傾げ、鼻で笑いながら、
「無視かよ」と、突っ込む。
その言葉は耳に届いていたが、彼が反応することはなかった。
世間の人間は彼の事を『完璧な人』と言う。
ルックスはもちろん、頭もいい。何をやらせても完璧。
しかし、ある一点においては完璧から遠ざかる。
恋愛は不得手なのだ。
初めて恋をしたと言っても過言ではない。
30歳半ばにして童顔、少し特殊な体質である折原彩香に特別な感情を抱いたが、その相手はなかなか落ちない。
興味のない相手はうるさいくらい寄ってくるのに、振り向いてほしい人はどんどん遠ざかっていく気がするのだが…と、彼は小説をめくりながら思う。
告白の返事さえもらえていないのに、ペアリングを買おうかな…と、思ってしまう自分にさえゾッとした。
小説の影響だろうか。ミステリー小説でも恋愛はおまけのようについてくる。
読んでるうちに影響を受けたのだろう。
いつの間にか最終ページを読み終えた彼は、また大きなため息を吐いてソファに座ったまま天井を仰いだ。
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