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翔が家を出て行ってから、ふと我に返った。
「ディスカウントショップ…?どこの……?」
起き上がって部屋を見回し返答を待ってみたが、返ってくることはなかった。
野本は翔が出かけた事にすら気付いていなかったのだ。
最近の自分には驚くばかりだ…と、手に持ったままだったらしい小説をテーブルの上に置き、立ち上がる。
このままでは廃人になってしまうのではないかと思い、仕方なく気を引き締めるためにシャワーを浴びることに決めた。
シャワーは浴びるが、髭を剃るかどうかはまだ決めていない。
よたよたと立ち上がった野本が風呂場へと向かう頃、買い物に出かけた翔は近所のスーパーに着いていた。
札幌とは言え、北の方に来ると田舎だ。古い建物が軒を連ねている。
お年寄りが多いせいか、この辺は絶えず救急車が走っている。救急車のサイレンの音を聞かない日はまず無い。
店内に入ると早速半額シールの貼られた商品を探した。
肉がいいな、肉!と思いながらカゴを片手に歩いていると、背後から颯爽と駆け抜けていくカートを押した数組の客。
そのカートの中身を翔は見逃さなかった。
台本をパラパラ漫画のように一瞬で読んでしまう男だ。野本よりもレベルの高い速読技術を身に着けている翔にとって、真横を横切ったカートの中身を記憶するなど容易いことだ。
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