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昼の間に広場で遊んだ熱を、帽子やコートのポケットに隠して帰った夕方。
家で待っていたママは、男の子を見るなり溜息を吐いて言いました。
「またなの?今度はミトン?どこに置いて来ちゃったの!」
「だってママ…あのね…」
「もういいわ。もうじき夜になってしまうもの。でも明日はきっと、見付けてらっしゃいね。」
男の子はこの数日、毎日のように持ち物をなくして帰って来ていました。
最初は毛糸の帽子、次はマフラー。
コートを着ていなかった時には、パパとママは二人して顔を見合わせ、呆れ返ってしまいました。そして今日はミトンです。
「ママ、あのね…」
もう一度呼んでみましたが、ママはもうキッチンの中。男の子はいたたまれなくなってそっと家を出たのでした。
森を奥へ進みながら、男の子は悲しいような、悔しいような気持ちでいっぱいでした。
あのなくし物には、理由があったからです。
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