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ミトンの在り処はわかっています。帽子だって、なんだってわかっていました。だって、自分で置いて来たのですから。
そのワケを、ママはちっとも聞いてくれないし、パパはいつも困った顔をするばかり。男の子は、それがとても我慢ならなかったのです。
そんな気持ちに唇を噛んで影の主を見やると、そこにはのっぽの雪だるまが立っていました。数日前、雪が積もった日に子供達みんなで作ったものです。
けれど、なんだかおかしな感じがして男の子はたじろぎました。
昼間に見た時はもっと溶けてぼこぼこと歪だったし、これほどは大きくなかった気がするのです。
まんまるで柔らかそうで…まるで息をしているよう。
でも間違いなく“あの”雪だるまです。
その証拠に、木の枝で作った手には、男の子のミトンが掛かっていましたから。
ママが編んでくれた、赤いミトンです。
本当は緑のがよかったけれど、ママの古いセーターをほどいて作ったから仕方がない。皆が似合ってるって言ってくれるから、今はとても気に入っているみたい。
そんな大切な物を、どうして置いて帰ってしまったのでしょう。
それは…
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