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久島先生はあれから一度も目を覚ましておらず、タダで置かせていただけるわけでもなく、久島先生の医療費と私の居住費をパン屋で働いて渡すという暮らしをしている。
…本当は、他人である先生の医療費を渡すのは不服である。
けど、この世界の知り合いは久島先生しかいないのも事実である。
どこか孤独を感じていた私は、結局、先生の分も働いていた。
「美味しい」
白いパンを齧り、また齧る。
旦那さんが作るパンはフォニュアで一番と言われるのも納得する。
今、私が働いている所のパン屋は偉い人の紹介だ。
私は永久にあのパン屋に勤めるのかと思うと、溜息を零してしまった。
いつ目覚めるかもわからない久島先生を待ち続け、私はどこか反面諦めが生じていた。
落ち込む気分とは真逆にパレードは佳境を迎えたようなのか、観客達が一層と盛り上がる。
ふと視線を上げると、言葉を絶する出来事が起きていた。
水路の向かいの通路、青年レイが歩いているが、その横に、ここには絶対存在しないハズの見覚えのある人が歩いているではないか。
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