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「ここに来た原因がお前のとこの木のせいだ。神社の巫女であるお前がここにいるから、てっきり俺は…さっきはごめん」
「謝らなくていいよ。訳も分からない事が身に起きているし、気が動転するのは当たり前だよ」
安心させるように笑うと、突然、伊納春が倒れた。
別に私の笑顔に殺傷能力があるのではない。
倒れた彼のおでこに手を当てると、とても熱い。
「気が緩んだ……」
伊納春は弱々しくそう呟くとすぐにスースーと寝息を立ていた。
さっきまで険しい顔をしていたが、安らかな顔をしている。
余程疲れていたのだろう。
“仕方ないな~”とどこか嬉しそうに言うドット公爵の計らいで、伊納春は青年レイに連れられてベッドに休ませてもらった。
気付けばもう夕暮れ近くになっていた。
「…さすがに目を覚ますよね」
未だに眠り続けている九島先生を思い出す。
ただでさえ、九島先生の医療費だって滞納しているのだ。
やっと、私が知っている人に話せたのに伊納春まで原因不明の意識不明になられたら困る。
非力な私ではどうすることもなく、伊納春がすぐに目を覚ますように祈るしかない。
私は伊納春がこちらに来たことで、何かが動き出すと確信をしていた。
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