1人が本棚に入れています
本棚に追加
伊納春がこちらの世界に来て3日目。
幸いにも彼は翌日にしっかりと目を覚ました。
右も左も分からぬ状態の彼は、これからの生活のため、ドット公爵の計らいによってこの世界について約5日かけて教わる。
私はいつもと変わらない日を過ごすつもりでいた。
それは、今日もフォニュア庶民として、パン屋で働き、九島先生の医療費と私と伊納春の居住費を稼ぐため、汗水を垂らしていた時だった。
「ニア湖の森に今から一緒に行きます」
それは侍女レニによって告げられた。
もちろんその言葉に首を横に振った。
今は勤務時間であり、自由時間でもない。
ましては、ニア湖の森はここから片道約1時間もかかる。
たとえ休憩時間に入っても、行けない距離である。
女将さんが行っておいでと手を振るが、私は断固として行きたくない。
何故なら、3日前に早退を貰ったばっかりで申し訳ないからだ。
厨房から旦那さんが何事だと、ひょっこりと顔を出してきた。
最初のコメントを投稿しよう!