湖の森へ

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伊納春がこちらの世界に来て3日目。 幸いにも彼は翌日にしっかりと目を覚ました。 右も左も分からぬ状態の彼は、これからの生活のため、ドット公爵の計らいによってこの世界について約5日かけて教わる。 私はいつもと変わらない日を過ごすつもりでいた。 それは、今日もフォニュア庶民として、パン屋で働き、九島先生の医療費と私と伊納春の居住費を稼ぐため、汗水を垂らしていた時だった。 「ニア湖の森に今から一緒に行きます」 それは侍女レニによって告げられた。 もちろんその言葉に首を横に振った。 今は勤務時間であり、自由時間でもない。 ましては、ニア湖の森はここから片道約1時間もかかる。 たとえ休憩時間に入っても、行けない距離である。 女将さんが行っておいでと手を振るが、私は断固として行きたくない。 何故なら、3日前に早退を貰ったばっかりで申し訳ないからだ。 厨房から旦那さんが何事だと、ひょっこりと顔を出してきた。
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