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「では、パジェット夫人様。市子様を3日程お借り致します」
「えぇ?!今日だけじゃないのかい?!」
「私も今日だけかと思っていたけど…」
「市子様の代わりにあの少女が働くように言っておりますので」
「そ、そうかい。旦那に伝えとくよ。それじゃ、あーちゃん、お疲れ様」
「あ、お疲れ様です。お先失礼します」
侍女レニと共に深々とお辞儀をして、パン屋を離れた。
足早に歩く侍女レニに、置いてかれない様について行くが、息が早くも上がる。
冷やかな視線を感じ、苦笑いをすると溜息をつかれた。
『風よ、来なさい』
何かに包まれる感覚、ふわふわと浮かぶ身体、既視感のようなものを覚えた。
以前、青年レイでも使っていた魔法と全く一緒のヤツだ。
「声を出さないでくださいね。死にたくなければ」
「ひぃっ…」
大きな悲鳴を出す暇もなく、一気に街の全体が見渡せる高さまで飛ばされた。
身体が自然と震えた。
ここから落ちてしまえば、私の身体が跡形も無く……
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