1人が本棚に入れています
本棚に追加
あらすじ
目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
撮影を終えた充足感と疲労感で寝落ちてしまったらしい。
片付けをしながら先程ぼんやりと見ていた夢を思い出した。それは懐かしい幼い日の出来事だった。
内原志織はAsterという名義で顔も性別も公開せず、ダンス動画を投稿している。
これには理由があった。
幼い頃の約束、それが彼女が動画投稿を始めた一つの理由。
相手の名前ももう覚えていないのだけれど、彼女にとっては人生の中で一番忘れられない出来事だった。
家から少し離れた河川敷で彼女とその子は出逢った。
子供特有の誰とでも友達になれる不思議な能力、それによってか二人は直ぐに仲良くなった。
会えば歌を歌ったり、それに合わせて動いたり、お話を作ってみたり今思えば周りと少し違う遊び方をしていたのかも知れない。
しかし、それが今の彼女を生み出すきっかけとなった。
星が好きな彼が「いつか星みたいに輝いてみんなを驚かせたい」と言ったのを志織が「じゃあ二人で叶えよう」と言って約束し、その証としてブレスレットを交換した。
数日後彼は引っ越していき、二人は会えなくなった。
引っ越した原因がいじめだと知ったのは数年後、志織がネット上で彼を見つけた時だった。
踊る曲を探している時に北斗七星という名義で曲を作っている人の事を知り、調べていく内に色んな情報が入って来た。それらと彼の作る歌詞が幼い日約束した彼と同一人物だということを物語っていた。
志織は約束を果たす為、有名になって彼に会うまでは彼の作った曲では踊らないと決める。
ところが、あるひょんなことから二人は再び出逢う。
幼き日に約束した彼女だと気付かない藤川司と、約束した彼だと気付いていながらも知らないフリを続ける内原志織。
異なる空で光を放っていた二つの星が同じ空で輝くように繋いでくれるのは何か。
忘れられかけていた約束が小さな綻びと大きな星の輝きとなる。
最初のコメントを投稿しよう!