67人が本棚に入れています
本棚に追加
今年もその日がやって来た。
バレンタインデー。
俺の幼馴染みはチョコレートをくれない。
幼い頃には毎年、にっこり笑ってくれていたのに……。
ここ数年、一番欲しい相手から貰えていない、可哀想な俺。
だからもう、バレンタインデー何てものは正直どうでも良い行事だ。
どうせ今年だってくれないんだろ?
分かってる。
そのカバンの中に、友チョコ一杯入ってんだろ?
だったらもう、それで許す。
義理の義理でもこの際気にしないから、お前からチョコレート欲しいんだって!
あほ、早く気付け。
今年はバカらしくて誰からもチョコレートを受け取らなかった。
本命から貰えないんじゃ意味が無い。
「あー、腹減った」
お互いに部活帰り。
「貰ったチョコレート食べたら?いつも家に持ってきてるけど、もう受け取らないからね?今年こそはちゃんと自分でどうにかしなさいよ」
「……今年は誰からも貰わなかった」
「うそ。とうとうばれた?食べずに横流ししてるって」
「バカ、ちげーよ。俺から断ったの」
「……何で?」
「……何となく」
「……へぇ、そうなんだ……。じゃあ……」
そう言ってガサゴソとカバンの中を探す。
「これ、食べる?さっき作ったの。……カフェオレ風コーヒーマフィン」
差し出されたそれは、かわいくラッピングされていた。
「これならそんなに甘くないから……どうかなって思って……あ、でも苦手そうなら無理しなくても良い、けど……」
うっそ。マジで?
「サンキュ」
照れ隠しに言葉少なく手だけ差し出す。
アホ。
そのフェイント、滅っっっ茶苦茶嬉しいだろうが!
一個と言わずもっとくれ。
家でゆっくり味わいたいから。
了
最初のコメントを投稿しよう!