コーヒーマフィン

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今年もその日がやって来た。 バレンタインデー。 俺の幼馴染みはチョコレートをくれない。 幼い頃には毎年、にっこり笑ってくれていたのに……。 ここ数年、一番欲しい相手から貰えていない、可哀想な俺。 だからもう、バレンタインデー何てものは正直どうでも良い行事だ。 どうせ今年だってくれないんだろ? 分かってる。 そのカバンの中に、友チョコ一杯入ってんだろ? だったらもう、それで許す。 義理の義理でもこの際気にしないから、お前からチョコレート欲しいんだって! あほ、早く気付け。 今年はバカらしくて誰からもチョコレートを受け取らなかった。 本命から貰えないんじゃ意味が無い。 「あー、腹減った」 お互いに部活帰り。 「貰ったチョコレート食べたら?いつも家に持ってきてるけど、もう受け取らないからね?今年こそはちゃんと自分でどうにかしなさいよ」 「……今年は誰からも貰わなかった」 「うそ。とうとうばれた?食べずに横流ししてるって」 「バカ、ちげーよ。俺から断ったの」 「……何で?」 「……何となく」 「……へぇ、そうなんだ……。じゃあ……」 そう言ってガサゴソとカバンの中を探す。 「これ、食べる?さっき作ったの。……カフェオレ風コーヒーマフィン」 差し出されたそれは、かわいくラッピングされていた。 「これならそんなに甘くないから……どうかなって思って……あ、でも苦手そうなら無理しなくても良い、けど……」 うっそ。マジで? 「サンキュ」 照れ隠しに言葉少なく手だけ差し出す。 アホ。 そのフェイント、滅っっっ茶苦茶嬉しいだろうが! 一個と言わずもっとくれ。 家でゆっくり味わいたいから。 了
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