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第一部◆◆◆
降りしきる雨、雨、雨粒が頭上からバケツをひっくり返したように降ってくる。
それは止めどなく、もう二度とその勢いが収まる事は無いんじゃないかと思うほど強く、激しい大きな大きな雨粒だった。
バケツをひっくり返したように振る雨粒に私の髪も、頼りない服も全てが濡れて気持ちと一緒にずっしりと重たくなっていくのをしっかりと感じていた。
その重さが増すたびに、どうしてか気持ちも一緒になってずっしりと重たくなっていくようで何も考えずにただ、足が赴くままに走り続け鬱陶しい雨粒から逃げるように見知らぬ敷地内に逃げ込んだ。
入ってはいけないような気がしたけど、今はそういうの考えていられない。
霞む視界の中、前方に淡いライトが揺らめいていて、私はそれを求めるように必死に必死に手を伸ばした。空中を光を掴むようにして両手を彷徨わせる。
ぎゅっと掴んだのは雨粒だけで、バランスを失った私はそこでぶつりと意識が途絶えた。
肌にまとわり付く髪が、気持ち悪かった。
無数の手の感触は今も尚、ハッキリと残ってる。
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