まさかの事態

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セレナとの気まずさが解消されないまま、学祭に突入した。 連日ともに、大盛況だった。 一番人気はパクチー押しの東南アジアが僅差で持っていった。 セレナ達の中東・アフリカ勢もケバブ中心にがんばっていた。 もちろん、征彰君ら欧州・豪州勢も、多種な料理の組合せを入れてがんばっていた。 私はというと、 茶色いスーツを着せられ、 顔は真っ白に、目の周りを黒々と、口元は真っ赤に裂けているように塗られ、 髪もボサボサにされた。 これで宣伝の為に、手には各屋台の名物料理の絵を載せたでっかい看板と共に、 キャンパスの人込みの中を練り歩くことを強いられた。 決して女性キャラではない。 しかも悪役だ。 隣を歩くジョニーは、赤と青の蜘蛛男の全身タイツを着て、ポーズを決め込んでいた。 他に赤いロボットの様相や蝙蝠男、青の全身タイツに赤いマントもいる。 ヒーローはなかなかに人気者だった。 そして、一部の人々から、「コスプレいいなあ」の声も上がった。 いいよね、そういうのが似合う人達は。 私もかっこいい女性ヒロインが似あえばいいんだけど、そうもいかない。 全身タイツキャラを全力で断ったら、これだ。 変装そのものへの拒否権は受付けられなかった。 片や、一部の嫌がっていた北米女子は、ノリノリで猫や蝙蝠のヒロインコスを着ている。 しかも、似あっているのが余計に癪だ。 憂鬱な気持ちで、それでも客引きの為に口元を引きつらせながらキャンパスを歩いていると、隣のジョニーが言った。 「カナ、だから言ったろ。素直にあれを選んだ方がいいって」
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