まさかの事態

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彼の指さした方には、猫耳付きのヘッドと黒いタイツを着たシンディーがいた。 グラマラスな彼女はそれがけっこう似合っていた。 「いや、胴長短足があれ着ても様にならないって」 自分で言って悲しくなる。 だが、何故かジョニーはムッとしている。 (え? 私何か悪いこと言った?) 「カナは自分を下げすぎ。もっと自信を持たないと」 「何それ。こんな私でどこに自信を持てっていうのよ」 何故ジョニーが怒っているのか理解できずに、私はふて腐れて先にドカドカと進む。 「俺は、カナもちゃんと、素敵女子だって知っているぞ」 突然の言葉に振り返る。 ジョニーは真剣な顔して見てきた。 「何、急に? しかも、素敵女子って言葉、どこで覚えたのよ」 「俺は高校からこっちだから、日本語はいっぱい知っている」 「あ、そう。そうだったわね」 向き直り、先を進もうとするが、ジョニーはまだ諦めない。 「俺を否定するのかよ?」 意味不明な言葉に再び振向く。 そんなつもりは微塵もないのに、何故ジョニーはそんな事を言うのか、分からなかった。 でも、彼の傷ついた顔を見て、私の何かがそう思わせた事だけは分かった。 「していないよ」 「してる」 「していない」 正直に言うも、すぐに反論が返ってきて、また言う。 この繰返しの中で、私はふとある光景を目にして止まった。 見えたのはセレナと征彰君が二人で楽しく学祭を巡る姿だった。 「たまたま休憩が被って一緒に見て回っているだけだろう」 ジョニーが私の見ているモノに気づいて言った。 「……わかっている」 私は自分を納得させる為にも声に出した。 だが、ジョニーは続けた。 そして、それは私の些細な努力をムダにさせた。 「でも、学祭終わったら告ると言っていた」 再びジョニーの方を振り返る。 その顔は至極マジメだった。 だからこそ、余計にそれが嘘ではない事が分かった。 「カナ! ウェイトゥ(待って)!」 私は自分がどんな顔をしていたかはわからない。 だが、いてもたっても居られなくなって、そのまま走り出していた。
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