まさかの事態

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私は人込みをかき分け、どこへともなく走った。 だが、うまく避けきれず、ある処で「ドン!」とぶつかってしまった。 「うわっぶねっ」 体当たりしてしまった私を力強く受け止めた先の頭を見上げた。 「あっ」 「え? カナ?」 勝司君が私を見下ろしていた。 「どうしたんだ? 顔ヤバいぞ」 「ご、ごめんね。何でもない」と、私はさっとその場を離れようとした。 だが、勝司君に腕を掴まれて逃げられない。 「何でもなくないだろ? 本当にどうしたんだ? こっち来い」 そして、そのまま人気のない処に引っぱられる。 中々に力強くて振り切れない。 私はなすがままに付いて行った。 校舎裏の隠れた処まで来た時、今度は後ろから声がかかった。 「カナ!」 勝司君と二人で振り返ると、そこには何故か必死な顔のジョニーがいた。 彼は私達の方へと来ると、私のもう片方の腕をとった。 「勝司はいい。カナを離せ。俺が……」 「こんな状態でか? ジョニーが原因じゃないのか?」 ジョニーが苦虫を?み潰した顔で否定する。 と同時に、人が増えた。 「エ? カナと勝司君? ドウイウコト?」 「セレナ、急にどうしたのさ?」 セレナと、少し遅れて征彰君がやってきたのだ。 「うわっ。え、カナなのか? ひでぇ顔。どうしたのさ?」 征彰君の反応に、私は今すぐに消えてなくなりたかった。 そんな私の代わりに勝司君とジョニーが征彰君を責めた。 「おい。カナに失礼だろ?」 「おまえ、誰の所為だと思って!」 だが、特に勝司君が私を庇ったことで、今度はセレナがキレた。 「ナンデ? カナ、私ガ勝司クンを好キナことヲ知ってイル癖に。ヒドイ、信ジラレナイ!」 「セレナ、違う! 違くて……」 そして、私の叫びを聞くことなく、セレナは走り去って行った。 (何よ、あんただって私が征彰君を好きな事を知っている癖に)
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