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(ヒィィイ―――――。な、な、何をやってんのよ!)
私は声にならない悲鳴をあげ、玄関扉にしがみ付いた。
ルームメイトのセレナはきょとんと首を傾げ、玄関近くの台所から近づく。
「カナ、ドウシタノ?」
(ドウシタノ、じゃないわよ!)
フライパン片手に迫る漆黒肌の美女に、私は何とか声を絞り出す
「ち、ち、近づかないで!」
私は背中と両腕を扉に貼り付け、これ以上は下がれない中を、更に下がろうとした。
(あれ、あれらが……)
迫りくる彼女が問題なのじゃない。
いや、彼女も問題か。その行動が。
だが、一番の問題は、彼女が持つフライパン、その中身だ。
「カナ、大丈夫?」と、セレナは心配そうに私にさらに近づく。
(し、心配はいいから、そ、その手の中の物をどっかにやってー)
しかし、私の声は音にはならず、私は辛うじてフライパンをワナワナと指さすだけだった。
指に気づいたセレナは、示す方を見る。
「あ、コレ? 美味シイよ、タブン。塩をタップリカケタカラ」
ニコッと笑うと、フライパンの中身を指でアチチとつまみ上げる
「や、や、やめ……」
しかし、彼女は私の声を無視して、つまみ上げたその六本の節だった足を持つ黒い楕円の物体を私の目の前にかざす。
私はもはや手で顔を覆い、自分の身を守るべく必死だった。
セレナは残念そうな顔をすると、指でつまみ上げたその物体を軽くフーフーして口に運んだ。
そして、美味しそうにかぶりついた。
黒い殻の中、白い何かを引きずりながら?みちぎった後の彼女の口からは、細く節くれだった足がはみ出ていた。
「い、いやーーーーー」
叫びと共に、私は気絶した。
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