まさかの事態

6/20
前へ
/20ページ
次へ
この件は、セレナがサークルの人達に部分的に話したらしく、 集まりに行くとさっそくジョニーがからかってきた。 「カナ、虫で気絶するのは弱すぎるぜ」 高校から日本の学校であるこのアメリカ人は日本語が上手い。 「うるさいな。だったら、ジョニーは大丈夫なの?」 「好きじゃないが、そんな大騒ぎはしないぜ」 「嫌いなのは一緒じゃん」 「怒るなよ。そんな弱さを出せば、マサもカナを女に見るかもよ」 ジョニーは少し離れた処でセレナと話す征彰君をニンマリと指し示した。 私も彼を見たその時、ちょうど彼の言葉が聞こえてきた。 「セレナ、虫触れるのか。すげえな。いいね、そういう頼れる女」 私は思わずセレナを睨み付けた。 隣にいたジョニーは気まずそうに口元を引きつりながら言った。 「ゼンゴン?ゼンゲン?撤回だ。あの男は頼りない。やめとけ」 「ジョニーまで何言っているのよ。私の勝手でしょ」 私は何も気にしていない体を装い、別のメンバーの処に行った。 私の所属する国際交流サークルは、いろんな国の人が集まる。 そこで当初は外国人の彼氏を作りたく参加した。 だが、結果的に私が好きになったのは、ロシアとのハーフな日本人の征彰君だった。 ジョニーにまで私の気持ちはバレているのに、肝心の彼には気づかれていない。 そして、それよりも問題な事がある。 どうも彼はセレナに関心があるみたいだ。 先ほどのようにセレナを褒める言葉はこれまでに何回も聞いた。 当のセレナは勝司君オンリーなので、何も気付いちゃいないけれどね。 話しながらも、征彰君とセレナの方をチラチラ見る。 (何よ、その厭らしいシナ。全然可愛くないからね) セレナが男子の前では緊張して頬を赤らめて上目遣いで見る癖があるのは 前々から知っているが、こういう時はそれが無性にムカつく。 ついつい気丈に振舞ってしまう自分にはできないから尚更だ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加