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イヤホンをはずす。
斉川はまだ
わたしの腕を掴んだままだ。
わたしは
瞳を真っ直ぐに見つめながら
問う。
<どうしたんですか?>
「すみません。まだ、話したくて」
<舞台のはなし?>
「他にも、色々。だめですか?」
斉川の手が熱い。
「イヤホン‥
いま聴いているの、
誰の曲か分かったらいいですか?」
答えるまもなく
斉川は続けた。
「スガシカオ」
<え?>
「スガシカオ、聴いてますよね?」
<‥‥。>
「あたり、ですよね?
なにか食べに行きませんか?」
びっくりして
言葉がでない。
なぜ、わかったの?
その瞬間
じんわりと思い出した。
スガシカオを
私に教えたのは
斉川だったことを。
わたしは
ただ頷いて
斉川の手に従った。
これから
こたえあわせをしなくては。
気持ちが
焦り出す。
どうして忘れていたのか。
こたえあわせを‥しなくちゃ。
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