第一章 決起1

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第一章 決起1

 粗末で手狭な山小屋の中、若い男がふたり、炉を囲んで酒を酌み交わしている。 「俺らだってよぉ。別に好きこのんで、山賊なんざ、やってるわけじゃねぇんだよ」  烏有は向かいに座っている男、蕪雑の、なめした革のように、つややかな褐色の肌が、橙の炎に照らされているのをながめた。太い髪はクセが強く、筋骨のたくましい大柄な体躯は、見るものによっては畏怖を感じてしまうだろう。  だが、烏有はすこしも蕪雑を怖がらなかった。彼もまた偉丈夫だから、というわけではない。烏有は細身で、抜けるように色が白く、女の着物を身につけていれば、そのように見えそうなほど華奢で艶麗な、力強さとは縁遠い容姿の男だった。 「人を襲う、なんてことをしなくても生きていけるんなら、そうするさ。けどよぉ、烏有と言ったか? 俺ぁアイツらを放り出して、自分だけがそうなろうとは、思えねぇんだ」  わかるだろう、と言いたげに蕪雑が烏有を見る。その目は木の実のように丸く大きく、端が吊りあがっている。無垢な子どものように、透き通った輝きをしている瞳に、烏有は切れ長のすずやかな目を合わせた。 「全員でどこかへ移住すれば、いいだけだろう」     
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