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烏有の切れ長の目が、炉の炎を映して怪しくきらめく。蕪雑は酒の入った革袋を持ち、烏有に差し出した。
「本当に、そんなことができるんなら、試してみてぇな。俺たちみてぇなのが、大事にされる府を造れるんなら、最高だからよぉ」
「決まりだね。これから、僕等の理想とする国を造ろう。――興国のはじまりだ」
「興国?」
「民のことを第一に考える府を、興すんだ。府にするためには、国にならなければならない。だから、興国だよ」
烏有は蕪雑の酌を受け、蕪雑は手酌で杯を満たした。
「でっけぇことをはじめるってのは、なんだかこう、腹のあたりがムズムズするな」
ニッと蕪雑が歯を見せる。
「それを引きしめ抑えなければ、足元を掬われるよ」
「わあってるって。そのために、よろしくたのむぜ、烏有。これからアンタは、俺の相棒だ」
「……相棒?」
「おうよ」
力強い蕪雑の声に、烏有はかすかに照れのようなものを目元に浮かべた。
「興国の成功を祈って、今夜はぞんぶんに飲み明かそうぜ」
「ああ。蕪雑の興国に、持てるすべてで協力しよう」
「違ぇよ。言い出しだのはソッチだし、相棒なんだから、一緒に、だろ」
屈託のない蕪雑に、烏有はためらいつつも、うなずいた。
「ああ。一緒に、国を興そう」
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