第一章 決起1

10/11
前へ
/233ページ
次へ
 烏有の切れ長の目が、炉の炎を映して怪しくきらめく。蕪雑は酒の入った革袋を持ち、烏有に差し出した。 「本当に、そんなことができるんなら、試してみてぇな。俺たちみてぇなのが、大事にされる府を造れるんなら、最高だからよぉ」 「決まりだね。これから、僕等の理想とする国を造ろう。――興国のはじまりだ」 「興国?」 「民のことを第一に考える府を、興すんだ。府にするためには、国にならなければならない。だから、興国だよ」  烏有は蕪雑の酌を受け、蕪雑は手酌で杯を満たした。 「でっけぇことをはじめるってのは、なんだかこう、腹のあたりがムズムズするな」  ニッと蕪雑が歯を見せる。 「それを引きしめ抑えなければ、足元を掬われるよ」 「わあってるって。そのために、よろしくたのむぜ、烏有。これからアンタは、俺の相棒だ」 「……相棒?」 「おうよ」  力強い蕪雑の声に、烏有はかすかに照れのようなものを目元に浮かべた。 「興国の成功を祈って、今夜はぞんぶんに飲み明かそうぜ」 「ああ。蕪雑の興国に、持てるすべてで協力しよう」 「違ぇよ。言い出しだのはソッチだし、相棒なんだから、一緒に、だろ」  屈託のない蕪雑に、烏有はためらいつつも、うなずいた。 「ああ。一緒に、国を興そう」     
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加