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第一章 決起3
烏有は蕪雑に、地図を広げて見せた。
「これが、申皇の治められている陽の図だ」
物珍しそうに、地図の表面に視線を走らせながら、蕪雑が問う。
「陽ってなぁ、なんだ」
「異教徒が、この地を呼ぶときの呼称だ」
ピンとこなかったらしく、蕪雑は鼻の頭にシワを寄せた。烏有は薄い笑みを浮かべて、話を続ける。
「ここが僕たちのいる山で、ここが蕪雑たちの住んでいた甲柄だよ」
烏有が地図の上に指を滑らせれば、ふうんと蕪雑が首をかしげる。
「紙の上で見ると、ずいぶんとちっせぇな」
「甲柄は、それほど大きな府ではないからね」
「そうなのか」
「もっと大きな府は、たくさんあるよ」
「府ってのは、どんだけあるんだ」
「地図上のこの印が、すべて府を示している」
烏有の説明に、蕪雑が数えだす。
「それは後にして、先にどこに国を興すかを決めよう」
「勝手に決めてもいいのか?」
「府も国も村もない場所なら、問題はないよ。誰も住んでいないということだからね」
「そんなもんか」
「そんなもんだよ。誰のものでもない土地は、そのまま申皇の土地だから、誰も文句はつけられない」
「ふうん?」
唇をわずかに尖らせ、蕪雑が地図をながめる。
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