第一章 決起3

2/6
前へ
/233ページ
次へ
「蕪雑はどうして、この山に落ち着こうと決めたんだい」 「そりゃあ、誰も住んでねぇし、府からそう遠くねぇし、食い物も家を作る材料も、たっぷりとあるからな。足りないものは、山道を行く荷馬車から、ちょいと融通してもらえるっつうか、拝借できるっつうか。……まあ、山賊働きができるしよ」 「それとおなじだよ」 「ん?」 「誰も住んでいない、食べ物があって家を作る材料もある土地。その上、どこかの府からそう遠くない場所なら、行商人だって訪れやすい。そうなれば、土地でできたものと商人の品とを交換し、不足しているものを手に入れることができる。山賊働きのかわりにね。そうできそうな場所を、選べばいいんだ」 「おお、なるほどな。山賊働きをしねぇで、ここで作った酒やなんかを、行商人の品と交換すりゃあ、手荒いまねをしなくて済んだのか」 「蕪雑。そこを言っているんじゃないよ。山賊働きを悔やんで反省するのは、後にしてくれないか。そういう、蕪雑たちがここに落ち着いた理由とおなじ理屈で、国を造る土地を決めればいいと言っているんだ」 「そういうことか。なるほどなぁ」  深々と蕪雑が感心を示す。烏有は親しみのこもった苦笑を漏らして、話を元に戻した。     
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加