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「蕪雑は、どんな場所がいいと考えているのか、教えてくれないか」
ううんと唸りながら、蕪雑が腕を組む。
「そう言われてもなぁ……。国を造るなんざ、考えてもみなかったからよぉ」
「君の仲間がどんな人間なのか、僕はなにも知らないんだ。彼等にとって、どんなところが住みやすいのかを、教えてくれないか」
「アイツらにとって、住みやすい場所かぁ……。そうさなぁ。あんまり甲柄と離れちまうと、家族なんかが府の中に残っているって奴がすくなくねぇから、遠くねぇのがいいな。でも、近すぎると面倒なことになりそうだしよぉ」
眉間にシワを寄せて、蕪雑が地図をながめる。
「ここが、甲柄なんだろ? そんで、ここが俺達のアジトのある山」
「ああ」
「ふうん……。なあ、烏有。この川は、どんぐれぇ遠いんだ」
蕪雑が指したのは、この山をはさんで甲柄と反対側になる土地だった。
「ここから甲柄に降りるのと、そう変わりないはずだよ。甲柄からとなると、三日ほどの距離だろうね」
「三日かぁ。となると、ここと山のふもとで二回、野宿をすりゃあ辿りつけるのか」
「単純に考えれば、そうなるだろうね」
「どういうことだ?」
「人によっては山道が辛くて、もっと時間がかかる場合もあるだろうと言っているんだよ」
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