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「なりそうになったことは、あるけどよぉ。持ってねぇんなら、そう言ってくれりゃあ、別のモンを欲しがったりしねぇし、全部をよこせとは言わねぇよって言やぁ、ケンカにならずに話はつくぜ」
「武力行使をしたことは?」
「ねぇなぁ。護衛を雇ってる奴だと、ちょっと威嚇しあう程度にはなるけどよ。ガタイのいいのを選んで行くし、向こうも無駄な怪我をしたくねぇだろうから、それ以上にはならねぇぜ」
烏有は自分よりも高い位置にある蕪雑の顔を、真っ直ぐに見た。蕪雑が不思議そうに小首をかしげる。
「なんでぇ」
「相手が、金をすべて置いていくから助けて欲しいと、懇願した場合はどう対応をしていた?」
「そりゃあ、いるもんだけ分けてもらやぁいいからよ。いらねぇって断わったぜ」
聞き終わった烏有は、太く長い息を吐いた。
「どうしたんだよ」
「蕪雑……。自分では山賊のつもりだろうけど、そうは認識されていないんじゃないかな」
「へ?」
「必要なものを、必要なだけ分けてもらっていた程度なら、被害届も出されていないだろう。おそらく、山に小さな集落があって、そこの人間が欲しいものを求めているだけ、と認識されているんじゃないかな」
「それだって、立派な山賊行為だろう。人様のものを盗んでんだからよぉ」
不服そうにする蕪雑に、烏有は吹き出した。
「クッ……はは。蕪雑、君は面白いな」
「なんにも面白くねぇよ」
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