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第一章 決起4
昼なお暗き、というにふさわしい山の中。うっそうと繁った草をかきわけて、よっつの影が現れた。
「おお。こうして見ると、さらにデケェな」
空に声を放つように、晴れ晴れと蕪雑が言う。
「まったく。我等の住まいから、二日ほどで出られると聞いていましたが、道のないことで、三日もかかってしまいましたよ」
ぼやきつつ蕪雑の隣に立ったのは、健康的な肌色の、蕪雑ほどではないにしろ、たくましい体躯をした青年だった。その横に、彼によく似た、のびやかな四肢の小柄な少年が、木の上から飛び降りて並ぶ。
「兄さんも蕪雑兄ぃも、体がおおきいからな。道がなくっちゃ進めないけど、俺っちみたいのだと、ヒョイヒョイッと木の上を行けるから、もっと早くつけてたぜ」
フフンと得意げに胸を反らした少年の後ろに、疲れた顔の烏有が立った。
「旅の楽士っていうから、もっと動けるもんだと思っていたけど、だらしねぇな」
くるりと振り向いた少年が言う。
「そう言ってやるな、袁燕。楽士は音楽で生計を得るもんだ。俺らみてぇに、山で獣を狩ったり、草を摘んだりするもんじゃねぇからな。慣れてねぇのも仕方ねぇさ。剛袁も、ご苦労だったな」
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