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蕪雑が少年に向かってとりなし、青年を労う。袁燕と呼ばれた少年は軽く肩をすくめて、好意的な目を烏有に向け、剛袁と呼ばれた青年は、軽く蕪雑に頭を下げた。
「烏有、大丈夫か」
「ああ……。すまない、蕪雑。まさか、これほど道がないとは思わなかった」
「ははっ。山の道ってのは、人や獣が通ってこそ、できるもんだ。獣の道があったって、ちいせぇモンだと俺等にとっちゃ、ないのと変わらねぇからな」
「まったく。あの兄弟が共にきてくれていなかったらと思うと、恐ろしいよ。野宿の荷物や枝払いを、彼等が引き受けてくれていなければ、もっと時間がかかっていただろうね」
「袁燕は身軽だから、木の上を行って先を見つけてくるし、剛袁は体力があるからな。あの兄弟はいつも、ふたりで獣を追ってんだよ」
「なるほど。弟が獲物を探し、兄がそれを仕留める、というやり方なんだね。それで同行者を彼等に決めたというわけか。――僕の監視も兼ねて」
それを聞き、蕪雑が申し分けなさそうに眉を下げた。
「すまねぇな」
「なにがだい?」
「俺ぁ、烏有を信用してんだぜ。酒と愚痴の相手をしてくれた上に、今後の提案もしてくれたんだからよぉ」
「本当に、蕪雑は心配になるほど、まっさらだな」
「ん?」
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