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「いや……。剛袁や、ほかの者たちの反応は、正しいんだ。山賊と名乗る、屈強な相手に連れていかれた僕が、自分の身を守るために大それたウソをついたと考えて、当然なんだよ」
「ウソなのか?」
「ウソじゃないさ。……蕪雑はどうして、手放しで僕を受け入れ、信用してくれたんだい?」
質問がよほど意外だったらしく、蕪雑は腕組みをして、思案のために視線を泳がせた。
「うーん。…………誰かを信じるのに、なんか理由でもいんのか?」
「えっ」
「俺は烏有を信じたいと思ったし、アンタの提案をすげぇって思った。それ以外に、なんか必要なのかよ」
烏有が目を丸くして、それを見た袁燕が軽やかな笑い声を立てる。剛袁が苦々しげに、ため息をついた。
「まあ、そういうわけだ」
腰に手を当てた蕪雑が、これで話は終わりとばかりに景色に目を向ける。
「しっかし、デッケェ川だなぁ! 俺ぁ、こんな川、はじめて見たぜ」
彼等が立っているのは、甲柄とは反対方向に山を下った、広大な土地だった。背後には、人の手がすこしも加えられていない、自然のままの山がそびえており、目の前には平坦な草原が広がっている。その先には、陽光を受けて輝く広大な川が横たわっていた。
「この土地に、そっくりそのまま、俺等が住んでいた集落の建物や畑を移しても、たっぷりとあまりが出るだろうな」
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