第一章 決起4

5/7
前へ
/233ページ
次へ
 言いかけた剛袁は、目に見えぬものを見ようとするかのように、目を細めた。 「まだ、ここに我等の住まいを造るかどうかも決まってはいないんです。考えてもいませんよ」 「えー」  つまらなさそうに、袁燕が唇を尖らせる。剛袁の横顔に、なにかが垣間見えた気がして、烏有は「おや」と彼を見た。 「心配性だなぁ、剛袁は。はじめようってときには、うんっと想像しときゃあ、いいんだよ。あんなふうにしてぇ、こんなふうにしてぇってのが、目標になって、がんばろうって気分になれるんじゃねぇか」 「蕪雑兄ぃ。俺は現実的で、物事に慎重なだけです。烏有の言葉を鵜呑みには、できかねますよ。彼は我等に豪族となり、国を造り、そのまま “府”にしろと言っているのですからね」 「そのまんま、受け止めてるじゃねぇか」 「ただ言葉を聞いて理解することと、納得をするのとでは、雲泥の差があります」 「剛袁は、ときどき難しいことを言うな」 「なにも難しくなど、ありませんよ。夢物語だと言っているんです」 「いいじゃねぇか、夢物語。夢は、デッケェほうが楽しいだろう? なあ。袁燕も、そう思うよな」 「うん! 男はでっかい夢を目指すもんだ」 「そうだ、そうだ。デッケェ夢を、目指すもんだ」     
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加