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言いかけた剛袁は、目に見えぬものを見ようとするかのように、目を細めた。
「まだ、ここに我等の住まいを造るかどうかも決まってはいないんです。考えてもいませんよ」
「えー」
つまらなさそうに、袁燕が唇を尖らせる。剛袁の横顔に、なにかが垣間見えた気がして、烏有は「おや」と彼を見た。
「心配性だなぁ、剛袁は。はじめようってときには、うんっと想像しときゃあ、いいんだよ。あんなふうにしてぇ、こんなふうにしてぇってのが、目標になって、がんばろうって気分になれるんじゃねぇか」
「蕪雑兄ぃ。俺は現実的で、物事に慎重なだけです。烏有の言葉を鵜呑みには、できかねますよ。彼は我等に豪族となり、国を造り、そのまま “府”にしろと言っているのですからね」
「そのまんま、受け止めてるじゃねぇか」
「ただ言葉を聞いて理解することと、納得をするのとでは、雲泥の差があります」
「剛袁は、ときどき難しいことを言うな」
「なにも難しくなど、ありませんよ。夢物語だと言っているんです」
「いいじゃねぇか、夢物語。夢は、デッケェほうが楽しいだろう? なあ。袁燕も、そう思うよな」
「うん! 男はでっかい夢を目指すもんだ」
「そうだ、そうだ。デッケェ夢を、目指すもんだ」
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