第一章 決起4

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 快活な笑いを弾けさせるふたりに、剛袁は愁眉となって額に手を当てた。 「苦労をするね」 「誰のせいですか。とんでもない話を持ち込んできた、張本人にねぎらわれたくなど、ありません」  たしかにそうだと、烏有は剛袁の恨めしそうな視線を受け止めた。 「貴方は、何者なんですか」 「ただの旅の楽士だよ」 「それがどうして、府を造る許可状を、中枢に求められるのです」 「腕のいい楽士は、身分を問われず宴に招かれる。そこで気に入られ、格別の待遇を得ることもある。それだけだよ」  剛袁が疑わしげに、烏有の目の奥を覗きこむ。 「たったそれだけで、大それた文を送れるとは思えませんね。……お偉方のどなたかと、格別な関係にでもあるのですか」  烏有は肯定とも否定ともつかない笑みを浮かべた。 「貴方は――」 「なにを、ふたりでコソコソ話してんだよ。さっさと、こっち来いって。川までは、まだまだ距離があるぞ! 今夜は、川のそばで野宿だな」 「俺っち、川で泳いでみたい」 「おう。そいつぁ、いいな。食料も確保してぇし、でっけぇ魚を捕まえて、土産にすんのもありだよな」  袁燕が歓声を上げて、剛袁と烏有に駆け寄り、ふたりの腕を引っ張った。 「早くしないと、日が暮れて川に入れなくなっちまうぞ」     
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